AERA2025年12月22日に社会的金融教育家の田内学氏が、
「日曜日の朝だというのに電話が鳴った。メガバンクからの金融商品の営業だった。その背景には、私たち生活者の「不安」がある。「インフレでこのままではお金が減りますよ。だから投資しましょう」というのが彼らのセールストークだ。
私がこの電話で最も問題だと感じたのが、銀行員の「忙しさ」そのものだ。足元では金融機関の賃上げが目立っている。人を欲しがっているのだ。しかし、それは「良いこと」なのだろうか。
本来、市場経済には「価格調整機能」があるはずだ。コメの値段が上がれば、農家の儲けが増え、そこに「人手」が移動する。その結果、コメの生産量が増えて価格が落ち着くのが正常だ。
ところが、現実はどうだろう。コメの値段が上がって、生活が苦しくなり、その不安を解消する為に金融商品が求められ、「金融機関」に人手が流れている。
これは、インフレが起きているのに短期金利が政策的に低く抑えられていることの弊害なのではないだろうか。日曜日の電話の向こうに「日本経済のちぐはぐさ」が見えた気がした。」
と書いてました。
2025年も日本ではインフレが進みました。全体も前年比+3%程度と高めでしたが、食料は+7%程度と更に厳しいインフレでした。一方、日銀の政策金利はようやく「0.75%」という状況です。
足元の東京を中心とした不動産価格の上昇が家賃へ波及していることや、円安による原材料などの輸入物価の上昇を観察していると、2026年も厳しいインフレが続くことが予想されます。
もちろん政府や日銀のトップもそのことは十分に認識しているでしょうが、様々な利害調整の結果、財政規律はあまり重視されず、政策金利もなかなか上げられない状況になっています。
その結果、田内氏の指摘するように、生活者はインフレの重圧からリスク資産の比率を増やしているという構図なのかもしれません。結果、金融機関は利ざやと手数料で利益が拡大してます。
ただ、ここで株式等のリスク資産の暴落が来れば、経験と余裕のある投資家は回復まで耐えられるでしょうが、多くの生活者は巨額損切りで「往復ビンタ」となりそうです。そうなると悲惨です。
やはり今は、財政規律を重視して、ビハインドカーブになっている政策金利を早期に引き上げることでしか、円の価値を取り戻し、インフレを鎮静化することはできないのではないですかね。

