「ルポ 京アニ放火殺人事件」(朝日新聞取材班著・朝日新聞出版)という本を読みました。
犯人の青葉真司被告(1978年生まれ)は「就職氷河期世代」に当たり、秋葉原通り魔事件の加藤智大元死刑囚(1982年生まれ)や安倍元首相銃撃事件の山上徹也被告(1980年生まれ)と同世代とも言えます。私は若干早く生まれてはいますが、そんなに年齢が離れていないので、今回の朝日新聞取材班のルポタージュを興味深く読みました。
この事件は、「自分の作品が京アニに盗用された」という青葉被告の妄想が動機になっているというあまりに理不尽なものですが、そんな被告でも犯行直前に現場脇の路地に腰掛け十数分間、今までのことを考えながら「良心の呵責」があったと裁判で明らかになっているそうです。
本では、加藤元死刑囚の同僚がインタビューで「事件を起こす前に、誰かの顔が思い浮かべば、思いとどまった可能性があったのではないか」と話し、別の識者は「犯罪を起こしたら、自分はこれを失ってしまうというものの存在が大事で、それはお金ではなく対人関係なのではないか」とコメントしてました。最後は、誰かひとりでも大事な繋がりがあるかどうかなのでしょうかね・・・
実際に、青葉被告は事件当時、生活保護を受けており経済的に困窮を極めていたわけではなさそうですが、看護師の訪問医療サポートを拒絶するなど人との繋がりを拒否し、孤立した状態で犯行を実行していたとのことです。
また別の識者は「こうした事件の再発防止は難しい。今の格差社会を作り出している社会の主流派には、青葉被告のような人間を自分たちが生み出したという発想はなく、異物として死刑にして排除してきた。」というコメントをしてました。
いろんな意見があるとは思いますが、読後感はあまり良くないルポタージュでした・・・
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