日経新聞朝刊2026年3月20日に、
「世界で200億ドルの市場規模を持ち、その40%が米国で提供されている「コンシェルジュ医療サービス」は、保険の代わりではなく、保険に上乗せして購入するものだ。
その料金は地域やサービスによって年間2000ドルから10万ドルまで様々だが、ここから医療費が支払われるわけではない。単に診察を受けるための列の先頭に並ぶことができるに過ぎない。
特別待遇のサービスが拡大しているのは医療分野に限った話ではない。
個人向けの旅行プランナー、様々な高級クラブの会員権、富裕層向け資産運用、教育コンサルタントといった市場は、ここ数年、1桁台後半から2桁の伸びを示している。米ネットジェッツなどが展開するジェット機を共同所有するサービスは、年間約10%の成長を遂げている。また、生体認証を使って空港の保安検査を「顔パス」で迅速に通過できるサービスを提供する米クリア・セキュアの利用者数は、2022年から3倍に急増している。
こうした定額制契約は、サービスを利用する人々が時間よりもお金を持っているという事実を物語っている。そして、そのことは多くの業界の多くの企業が、ゆっくりではあるが着実にお金がある場所、すなわちラグジュアリー市場に移行していることを示している。
米国の富裕層は人口の10%に過ぎないが、消費支出全体のほぼ半分を占めている。そのことが、中間層や低所得層が支出を切り詰めている中でも、個人向け高級品市場が好調を維持している主な要因となっている。
米国の富裕層は人口の10%に過ぎないが、消費支出全体のほぼ半分を占めている。そのことが、中間層や低所得層が支出を切り詰めている中でも、個人向け高級品市場が好調を維持している主な要因となっている。たとえ社会の結束を犠牲にしても、排他性こそが重要なビジネスモデルというわけだ。」
とありました。一方、同日の別記事では、
「トランプ氏を米大統領の座に押し上げた要因のひとつが、低所得の白人労働者に広がる絶望感だ。薬物中毒、アルコール依存、そして自殺という3つに起因する「絶望死」が増えるなか、エリート層への憤りがトランプ支持のうねりにつながった。
絶望死は白人労働者の多いラストベルト(さびた工業地帯)などで00年ごろから拡大。ノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートン氏が白人労働者の苦境とその平均寿命の低下を分析・定義した。
16年以降、白人労働者に「もう忘れられた存在にしない」と語りかけ、政治エリートを攻撃したトランプ氏がこの地域で圧倒的な支持を集めるようになった。米国の社会学の専門家は絶望死がトランプ現象を生みだした要因の一つと分析する。
薬物のまん延も止まらない。炭鉱産業などの労働者は日常的に負傷が多く、鎮痛剤の需要が大きい。10年代にはヘロイン、最近では合成麻薬「フェンタニル」と次々に新しい麻薬が流入した。
ある白人の自動車整備士は「ワシントンの政治家や官僚が、私たちの生活の実態を知らずに押しつけてきた」政策や考え方への反感がトランプ支持の背景にあると答えた。
こうした言葉からにじむのは都市部の住民やエリート層から「弱い者」「助ける対象」と見下されることへの反抗心だ。古くから土地に根付き、栄光と苦難を経験してきた人々の尊厳や誇りを守りながら、どう経済の再成長を目指すのか。」
ともありました。どうやらアメリカは凄まじいまでの「分断社会」となってますね・・・
日本も「みんなで貧しくなろう」という長く続いた「デフレ社会」が終わり、「インフレ社会」に本格突入しました。価格ダイナミズムが戻った一方、資産インフレで格差が広がりつつあります。
私は富裕層向けコンシェルジュサービスには全く興味が無いのですが、もし「医療」にアクセスする際「優遇サービスにお金を払わないと後回し」だったら、考えを改めないといけなさそうです。
日本の「国民皆保険」と「ユニバーサルアクセス(誰でも基本どんな医療にもアクセス出来る)」は当たり前ではなく、膨大な社会保障費に支えられた公的サービスだから成立しているわけです。
私は「社会保障」が社会連帯の大きな砦だと思っているのですが、日本でもその費用負担の議論になると紛糾し、今も政治的迷走が続いてます。このあたりが日本の分かれ道になりそうです。
アメリカのように富裕層が「カネが全て」の排他的な世界に引きこもり、中低所得層はインフレ直撃で生活の厳しさが増す中でも「尊厳や誇り」に固執しポピュリズム政治家支持に傾倒する、という社会に日本も進んでいくと暮らしにくそうです・・・私としてはそうならないでほしい・・・
