「インフレの時代」(渡辺努著・中央公論新社)という本を読みました。
「インフレの到来で日本でも価格メカニズムが復活する。これこそが「インフレは望ましい」と筆者が考える最大の理由である。価格メカニズムを通じた競争の活性化は、日本経済全体の活力を取り戻す契機となるだろう。
ただし、すべてがうまくいくわけではない。懸念のひとつは、物価上昇に賃上げが追いつかず、実質賃金が低下する現象である。人手不足を背景に解消方向には向かうだろうが、すべての労働者の賃金が一様に上がるとは限らない。むしろ労働者間の格差は広がるだろう。
つまり「インフレの時代」とは経済のダイナミズムが改善する一方で、その裏側として格差の拡大を伴う時代なのである。」
とまとめてました。長年「物価」の研究をしてきた著者だけに、内容は読み応えがありました。
ひとつ面白かったのは「トービンの潤滑油効果」という考え方で、人々は名目賃金が下がることに大きな痛みを感じる(名目賃金の下方硬直性)ので、マクロ的には物価+2%の時には賃金+3%というような現象(潤滑油効果)が起こるらしいです。なんか人間味のある経済現象ですね(笑)。
22年春に始まったインフレは「エネルギー」から「食料」へと移行し、最近はいよいよ「家賃」に及ぼうとしてます。この「家賃」は非常に経済的インパクトが大きく、粘着性も強い項目です。
日銀も「家賃」が本格的に上がると、利上げを急がざるを得なくなるでしょう。インフレは「格差」をもたらすというのが著者の指摘ですが、「家賃」格差は特に大きな社会問題化しそうです。
また、賃金問題は40代50代事務職の供給過剰(記事はこちら)の解消が鍵ですが、正社員の金銭解雇が法制化されないと、一部の人はじわじわと実質賃金が削れられる苦しい展開になりそう。
